2020/06/12

150%intensiv アーノンクールのマタイ受難曲





こちらはウィーン時代に
アーノンクール&コンツェントゥス・ムズィクス
&シェーンベルグコアで


バッハのマタイ受難曲のCDプロジェクトを
行った際のドキュメント動画。
(ドイツ語)


私は右側のコアの前列、
水色のシャツの女性とオレンジのシャツの女性の間に
挟まれて歌っております。


ドイツ語が母国語のメインメンバーの
圧倒的なリードがあってこその


情熱的な演奏。



動画の中でアーノンクールは、


「私は芸術家としてのバッハはとても良く理解しているが
人としてのバッハのことはほとんど知らない。
果たして彼が信仰深かったかどうかさえも。

彼はとんでもない天才だ、
 人が脳の中にあのような音楽が浮かぶというのはね。」


と語っています。




魂から言葉を放つソリストたち、


Wコアが表現する
多方面で起こる極限的感情のうねり、


一瞬たりとも緊張を解くことなく
物語を次々と運んで行くオーケストラ。


アーノンクールのこの作品に対する
とてつもない情熱が


 演奏者の魂に火をつけ、


皆が半ば変性意識とも言えるような状態で


キリストが十字架にかけられる
歴史的な一場面を、


まるで
その場に立ち会っているかのような
臨場感を伴って


再現した演奏。




ソリストのPregardianは、


「アーノンクールの技術、
彼の毎瞬にかける音楽的密度は
100%いや150%だ。」


と語っています。








私にとってバッハや古典の師匠は
アーノンクールだったと言えるくらい、


コアでアーノンクールと共演する機会を頂く度に、


音大生時代には全く知らなかったことを
たくさん学ばせて頂くことができ、


今思うと大変貴重な時間でした。



特にこのマタイ受難曲では、 


ただ美しく歌うという以上の、


感情や情熱や野生といった経路に
血液が波打つようにアクセスしながら


究極の芸術性を生み出すという、


それまで体験したことのなかった
脳内のゲートの開き方を、


非言語的に教えて頂いたような感覚がします。


もう二度と一緒に歌える機会は
ありませんが、


とても言葉では表現しきれないほどの
情熱的な体感、


 それが私の記憶と財産そのものです。


 Vielen herzlichen Dank !!